No Mapsに行ったよ、という話と、ボトムアップ型まちづくりの話。

 

 

ご縁があり『No Maps SAPPORO』というイベントに参加させていただきました。

 

no-maps.jp

 

「街に、未来をインストール。」とのキャッチコピーが冠された今回、

札幌市は初音ミクの生まれた都市とのバリューを全面に、

IT先進都市のような街を目指し、さまざまな事業をおこなっています。

 

 

2014年、坂本龍一さんを総合ディレクターに迎え第一回目が行われた

『札幌国際芸術祭』なども、このような市政の観点から取り組まれています。

 

長嶋りかこさんデザインの、このポスター好きだったなあ!

最近お名前聞かないですがお元気なんでしょうか…

f:id:taaaaaaaaa:20171018113657j:plain

札幌国際芸術祭 – SAPPORO INTERNATIONAL ART FESTIVAL

 

 

 

今回はIT系のベンチャー経済産業省のみなさんが集まるカンファレンスなどをはじめ、

もはや札幌の文化になりつつある『札幌国際短編映画祭』もNo Maps SAPPAOROの一イベントとして組み込まれる、

期間中は札幌のクラブ・ライブハウスでサーキット型の音楽イベントも開催されているなど、

さまざまなステークホルダーを巻き込んで、時間(と税金)が大量に投入されている感、

一大フェスティバルてな様相呈しながらのイベント期間だったわけですが、

所感を書こうというエントリでございます。ご笑覧ください。

 

 

バイオテクノロジーすごいね

 

 

カンファレンス系のイベントからひとつをピックアップして。

めちゃくちゃおもしろかったです。こちらでした。

no-maps.jp

 

 

 

たとえば、遺伝子解析などの「バイオ系研究者の研究領域」で、いま、

シリコンバレーを中心にスタートアップがたくさん生まれているそうです。

この流れを受けて、経済産業省を中心に、日本政府でも

「バイオテクノロジーを新産業として育てよう」という機運が高まっている、

そして領域に取り組んでおられる大学関係者、ベンチャー、既存の研究者、大企業の研究者の皆々さまが事例共有とパネルディスカッションを行う、というものでした。

 

登壇されていたのはこんな面々。

 

<モデレーター>

上村 昌博 
経済産業省 商務サービスグループ 生物化学産業課長

<パネリスト>

近藤 昭彦 氏
神戸大学大学院 科学技術イノベーション研究科長
田村 具博 氏
(国研)産業技術総合研究所 生物プロセス研究部門長
水無 捗 氏
三菱ケミカル(株) バイオ技術研究室長
武田 志津 氏
(株)日立製作所 研究開発グループ主管研究長
前田 泰宏
経済産業省 商務情報政策局 審議官

 

ざーーーっくり話すと、

「いままでのバイオ系研究(”ウェットな領域”と表現されてた)は、莫大な時間がかかっていた」けれど、AIの登場で「DBTLサイクル*1」を回せるようになってきた、

このイノベーションにより、バイオ研究の技術を商品化はじめさまざま事業に展開できる

そんな話でした。

 

政府もこれにむけて動き出しているようで、iPS細胞をはじめとした、人口減少社会における新たな産業構築のひとつの柱に育てたいという思惑があったようです。

平成28年度バイオ関連予算

http://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/bio/h28yosanngaiyou.pdf

 

まま、このようなイノベーションを推進し産業化していくためには、

既存の大学研究機関に加え、そのリソースで金を稼ぐことができるベンチャー企業群が欠かせないよねえ、その受け皿に札幌はなりたい、そのためにはがんばってって予算出しまっせ、という姿勢に支えられたNo Mapsというイベントでした。

 

加えて、夜には海外などからも先進的なアーティストを招きサーキット型のライブが行われる…

非常に「未来を感じる」三日間だったのではないでしょうか。

 

「こんなことに税金をつかうのはけしからん!」的な皆さまももちろんいらっしゃるかとは思いますが、ぼくは、成否はもちろんまだわからないですが、

京都市をはじめとして「文化/産業に予算を投入する」ということは「未来へ投資する」ことだと考えておりまして、こういう予算の使いかたを決断できる市政は素晴らしいよねえ、と感じた次第であります。

 

 

 

 

トップダウン見直さない?という話

 

というふうに、ぼくが見る限りではひっじょーに行政主導の部分が大きいイベントに見えたわけですが、

まちづくりの手法においてボトムアップ型が適している」地域と、「トップダウン型が適している地域」があるのではないかなあとの所感を感じたわけです。

 

f:id:taaaaaaaaa:20171018194546j:plain

 

「まちづくりは西高東低」ということが語られます。

先進事例としてあげられるのは、徳島県神山町や、島根県海士町、福岡市もスタートアップに優しい街として良く語られますよねえ。

と、こんなふうに「おいおい関西ばっかりじゃねえか!」と感じます。

 

このことにぼくなりの仮説をたてますと、おそらく

「図々しい人間が多い街はボトムアップでのまちづくりに有利」だということなのではないかと感じるんですね。

 

逆に、東京以北は、風土的にも消極的と言いいますか、

こつこつすすめる2番バッタータイプが育まれやすい街だと感じるのです。

悪く言えば「同調圧力が強い」ですけれど、良い悪いの話ではなく、

「このような特性を持っている」という話ですね。

 

その観点で見ると、今回のNo Maps SAPPPROのような、

本来「民間から自然発生的に立ち上がってくるべき取り組みも行政主導でおこなっていく」という姿勢はとても合理的に感じますし、

なんていうんだろう、そういう姿勢でないと、うまくいっている印象がないのですね。

 

例えば、北海道で札幌以外で人口増を果たしている数少ない市町村、

奇跡の下川町は、移住政策の観点で行政がめちゃくちゃセンスある施策をおこなって、もちろんプレイヤーもきちんと応え、結果的に人口が増えているという印象でした。

 

例えば、安倍さんが目指すデフレを達成している街があります、ニセコ町です。

トマム町はハンバーガーをセットで食べようと思うと、最低1,500円からという街になってます。地価もガンガン上がってます。

それは、「アジア最大のスキーリゾートをつくる」という行政主導のまちづくりの結果で、冬に関してはもはや良質なパウダースノーを求める外国人富裕層が町民数を上回る、みたいな現象が起きているようです。

人口約5000人の街に、ヒルトンリゾートがあるんだぜー。


f:id:taaaaaaaaa:20171018191955j:plain


www.niseko-village.com

 

 

まま、というふうに、市民の力!みたいな文脈で話されることの多いまちづくりですが、トップダウン手法の方が適切な土地もあるんじゃねえかなあ?ということは、

北海道に住みながら地域経済を専攻する一学生として感じるところであります。

 

No Maps SAPPORO、そういう観点で良い取り組みだなあ、関係者の皆様のスキル高すぎるだろうすげえなあと感じる反面、

(会えなかっただけかもしれないですが)ほーんっとに、北海道の学生にはひとりも会えず、東京からいらっしゃたITベンチャーの社長と、経産省のみなさまと、ちょっと、北海道のみなさんが盛り上がる飲み会の光景を見たときに、すこーしだけ、寂しくなってしまったということも…

 

さてさて、予想外に長いエントリになってしまいました。

もっとちゃんと書かれたレポは、この記事が読みやすかったですので、ご興味ある方はぜひ。

 

北の国からスタートアップの勃興を目指す「No Maps(ノーマップス)」が札幌市内で開幕——自動運転からAIまで世界を目指す技術が勢ぞろい - THE BRIDGE(ザ・ブリッジ)

 

 

こんかいは以上となります。

f:id:taaaaaaaaa:20171018194615j:plain



*1 設計(design)⇒構築(built)⇒試験(test)⇒学習(learn)の略、learnの部分をはじめAIが介入することで、実験⇒結果⇒検証のサイクルを高速に、かつオープンデータを縦断しながら研究をすすめられるようになる。

こちらの論文でちょっと詳細に書いてくれています ⇒ 合成生物工学の未来展望 , 近藤 昭彦・植田 充美 著

http://www.sbj.or.jp/wp-content/uploads/file/sbj/9309/9309_tokushu_0.pdf