三ノ宮駅前を毎日バスで通勤しているんだけれど、これは、ほんとにフェアなの? 神戸市に電話で聞いてみた

 

 

421日午後2時ごろ、神戸交通局が経営する神戸市バスが、亡くなった2人を含む8名の死傷者を出す事故を起こしました。

被害に合われた方、またご家族の皆さん、心よりご冥福をお祈りします。適切なサポートがありますように。

 

神戸のなかでも最も利用客が多い、JR三ノ宮のほんの隣で起きた事故。

ぼく、毎日、このバスに乗って会社に通勤しています。

 

 

事故があった「JR三ノ宮駅前」の停留所を過ぎ、センター街前神戸市役所前三宮神社で降りる。

 

普段から神戸市バスの運転手の皆さんは、「サービス業としてどうなの?」と感じるシーンはありますが

運転手として、事故に対する注意は常に怠らない姿勢でお仕事をされていたのではないかなあと感じるところなのですけれど。

 

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事故翌日の朝、通勤時のバス。ただただ日常。

 

 

14時過ぎに事故が起こり、神戸市交通局の記者会見は17時ごろ、3時間後にはしっかり情報が共有され状況説明も申し分ない印象で、危機管理的な観点でネガティブな印象はありませんでした。

ただ一点、すごく気になることがあります。

 

運転手であった大野さんという方が第一報の段階から「大野容疑者」と報道されていることです。

これは本当にフェアなんでしょうか?

 

 

記者会見のなかで「大野容疑者の事故歴や健康状態、アルコールなどのチェック体制についてご説明をお願いします」という質問に対して、事前に想定されていた質問だったのでしょう、用意される資料に目を落としながら

 

「直近では平成22年に、乗用車に接触されたという事故を起こしており、それより以前では平成22年の事故の3年前に、えー、いわゆる、乗客が社内で転倒する事故が起きています」

 

 

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質問に答える神戸市交通局の内藤氏。3時間しか準備の時間がないなかでの記者会見、優れた危機管理能力を発揮されていた印象を受けました。

 

 

と回答しました。ぼくが観たニュースではこの部分を執拗に流し「過去にも事故を起こしていた、ということですね」という内容のコメントを何度も繰り返しています。そうです、ミ〇ネさんです。昔からずっとそういうところが嫌なんだ。

 

記者会見のなかで「この事故歴3回という回数は多いものだとは考えておらず~」という趣旨の発言が内藤氏からあったわけですが、ここ、エビデンスをもって説明する必要があるだろうなあと感じます。

 

マスコミの質問としては、大野さんの傷病歴や勤務態度を探るものが多い印象を持っています。

もう一度。これは、ほんとうにフェアなの?

 

初動の段階で運転手の大野さんを「容疑者」と断定し、粗を探すような報道を繰り返す一部のマスコミ。嫌気がさしたことと、きちんとフェアな観点で、エビデンスにもとづいて認識したいなあと感じ、調べられる限りの内容を書いておこうと思います。

 

 

 

神戸市バスの運行状況、事故率

 

神戸市のプレスリリースによると、大野さんはこの日710分に最初のバスの運転を行われています。

その後、事故が発生するバスのハンドルを握ったのは1230、約5時間で5回目の運転でした。

http://www.city.kobe.lg.jp/life/access/transport/bus/owabi.html

 

 

ここから、神戸市に電話で教えていただいたことです。

 

まず神戸市バスの営業所は神戸市内に6つあり、そのうちの3つが市が管轄する営業所とのこと。

残りに関しては外部に業務委託をしているという運営をされているそうです。

主な委託先として、阪急バス、神姫バスを挙げてくださいました。

 

 

神戸市で1日に走るバスは、5786本だということです。

それらを支える運転手さんは、

ぜんぶで778人

とのご回答頂きました。

 

そして神戸市だけですべてのバスの運行を支えるのは難しいようで、5781本のバスの運行のうち、25.9%の4285本を外部委託しているということです。

おそらく適切な直営運行のマイルストーンを25%に設定しているのかと想像しました。

 

運転手さんも外部委託です。

778人の運転手のうち、27.8%にあたる561名は外部委託スタッフとのこと。

 

 

そして、

2018年に発生した転倒などを含む事故は152件だそうです。

 

そのうち、神戸市直営バスで起きた事故は71件とのこと。46.7%が神戸市の管轄下で起きています。

今回の事故も、報道のされ方や対応を見る限りこれに該当するのようですね。

 

本数ベースでも、運転手ベースでも神戸市直営のバスでの事故の比率は高く見えますが、神戸市のバス運行比率は都市部、三宮を中心に偏っていることもあり、そのような路線を神戸市直轄で管理しているという前提にすると

乗客ベースで考えるとむしろ少ない数字になるのではないかと。肌感覚です。

 

 

いちばん大事だと思うデータは、

2018年の神戸市全体のバスの事故率は約0.007%

ということです。

 

 

この数字、どう読み取りますか? ぼくはめちゃくちゃ少ないなと感じます。

神戸市交通局はじめ、神戸市の日頃からの努力を想像します。そしてそれを支えているのは間違いなく現場の運転手さんです。4月21日、14時までの大野さんじゃないだろうか。

 

 

 

 

もしも、自分がその立場だったら

 

 

もしも、過失か判断がつかない状況で大々的に「容疑者」と顔入り・実名で報道されたとしたら、それを会社が許していると感じる状況であったら、人格的な裏切りに感じます。調査のうえで、大野さんに過失があることがわかった段階で実名を出すことはできなかったのでしょうか。

 

 

大野さんは「ブレーキを踏んでいたが、バスが急発進した」と話されていると報道されています。

もし、このことが事実だったとすれば、過失はバスを管理すべき立場の神戸市交通局にあり、名誉毀損甚だしい、と思います。

 

 

けれど、尊い命が喪われたことは間違いのない事実。

今後、このような傷つき方をする人が生まれないように、また二次被害ともいえる人が生まれることがないように、神戸市にはしっかりとした検証と経過の報告を行ってほしいと切に願います。