地図から考える少し先の未来はどんなふうに見えるだろう?

友人から聞いた話がおもしろかったので、備忘録として残しておきます。
地図の可能性の話についてです。
 

 

歴史的に見た「地図の価値」

 
古今東西、地理を理解することの重要性は甚大なものでした。
 
衛星の技術が発達し「俯瞰的にその土地を見ることができる」ようになる前には
世界が、また自分たちが生活をしている場所がどのようなものであるかというのは謎が多く、
危険を伴う「測定」をしなければならないことでした。
 
 
13世紀ごろまで、世界は円盤であるとキリスト教的にはいわれていました。
身近な地政学は国家の運営に欠かせないものでありましたが、身近を超えた世界は、むしろ神話的なものとして捉えられていたようです。
ぼくらが宇宙人をおもうような感覚でしょう…

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▲ ヘカタイオスの世界地図。測量をもとにつくられた「世界を示す地図」はこれがはじめてだったらしいです

ミレトスのヘカタイオス - Wikipedia

 
 
 
国家という概念が誕生し、同時に「統治」と「国家間での戦争」も同時に誕生したわけですが
どちらを行うにも「どのような構造をした場所なのか」ということの理解はなくてはならない情報であったため
地政学・地質学の重要性は、現在よりひっきんのものであったと想像します。
 
 
そうして大航海時代を迎え、現在の学問に続く「世界の姿」が測量技術に支えられ徐々に明らかになってくる時代が迎えられます。そして衛星技術をきっかけとし、「地質学的に世界の姿を理解する」ということに関しての人類の長い挑戦はひとまずの決着を迎えました。
 
 

地図2.0「つながりを示す地政学

 
物理的な情報を示す意味としての「地図」は、発達の極みを迎えたいま、世界の地政学者はなにを考えているのでしょうか。
 
昨年、このような本を見ました。
 
 
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「接続性」(Connectography)とは、交通、通信、エネルギーなどのインフラ整備による国家の枠組みを超えた「つながり」を示します。「ジオグラフィー(地理学)」ではなく「コネクトグラフィー(接続性)」がふさわしい時代であるという認識のうえに、どのような未来が見えてくるのか、膨大なデータと自ら世界中を歩いた経験をもとに描いています。
世界の様々な都市・コミュニティがエネルギー供給網、交通インフラ、インターネットで〝つながり〟、国境の枠組みをはるかに超えて驚くほど合理的でスピーディーなやり取りをおこなっています。
いま、世界の都市では何が始まっているのか、どこへ向かおうとしているのか、著者が実際に訪れて体験した〝現在〟から見えてくるもの、そのすべてが本書にあらわれています。
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書評としては、Wirdeのこの記事がたいへんに優れています。
 
気鋭の地質学者として米軍のコンサルティングなどを歴任した、パラグ・カンナさん。

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地政学的な視点で現在のグローバル社会を見たときに、国境など「従来の意味での地図情報は意味がちいさくなっている」としています。
 
国家の力が相対的に低下し、グーグルやフェイスブックなどのIT産業や、エネルギー産業などが、わたしたちの生活の実際の部分に大きく影響しているものであり、
現在のナショナルパワーを決定しているのは、大きく分けて下記であるとパラグ・カンナさんは言います。
 
 
1.)グローバル企業がどのような影響力を発揮しているか
2.)エネルギーがどのようなプロセスを経てつかわれているか
3.)国を凌ぐエネルギーを持つ「メガシティ」がどのように存在しているか
 
 
実質的に世界を動かしているのは、エネルギーやIT技術を含む意味での「サプライチェーン」であり、またそれらのベースとなる「メガシティ」であり、そしてそれらが「どのように ”つながっているか” 」であり、そうであるならば、
「それらのインフォメーションまでを内包する地図でなければ意味がない」と言います。
 
そのような、パラグ・カンナ的な21世紀の地図は以下のようになります

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▲ 『接続性の地政学』より
 
 
サプライチェーンを「つながり」(=性格には「接続性」(Connectography))と言い、
「どのようにつながっているかで世界はできている」というパラグ・カンナさんの本はとてもおもしろいので一読の価値ありです。
 
 
 

ぼくたちにとっての地図2.0とはどのようなものなのだろう?

 
 
さて、ここまで「地図とは位置情報を示すものであったが、それだけではなくなってきている」ということを書いてきたのですが、
その変化は、わたしたちにとってはどういうことでしょうか?
 
いまさら感が満載で申し訳ないのですが、位置情報ゲームのイングレスは
それを考えるうえで大きなヒントになるのではないかと感じます。
 
 
Googleが所有する正確な地図情報のうえに、陣取りゲームという新たな世界観を重ねることで
いま見えている世界をまったく別のものにしてしまうイングレス。
 
イングレス、またイングレスを制作するナイアンテック社のもうひとつのメガヒット『ポケモンGO』を説明する言葉として「拡張現実:AR」という言葉が使われますが
 
このような潮流と、意識されているのかはわかりませんが
パラグ・カンナが唱える「つながりを表す地図情報」をあわせたような
そんな情報提供をされているプレイヤーが増えているようです。
 
友人から例えばで聞いた話は、こんな会社の存在。
 
【株式会社Stroly https://weare.stroly.com/jp/
 
Strolyという会社は、「地図に情報をキュレーションし掲載し、見やすさ(UX)まで編集をする」ということをしている会社だそう。
 
たとえば画面はこんな感じ。
 
 
 
 
残念ながら、まだこの画面を地図2.0だという気にはなれませんが
この話を聞いた友人とぼくは「地図にコミュニティの情報が載る未来」を思い浮かべました。
 
 
従来型の地図に載っている情報は、主にこんな感じです。
 

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そして、主にGoogleなどが挑戦していることは従来の地図の情報のひとつである機能情報に
主に「レビュー」という観点で情報を上乗せするということでした。
 
このことにより、ただの情報が「あそこは美味しい」や「あまりお勧めできない」など、より立体的な情報として浮かび上がってきます。
そしてGoogleは、この機能の拡充にとても熱心です。
 
そしてこのことは革新的だと個人的に感じます。
 
そして先に紹介したStrolyのみなさんの戦略もこの方向性にもとづくものだと考えます。

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そして、パラグ・カンナのいうサプライチェーンなどの意味ではなく、
ぼくらにとって身近な意味での「つながりやコミュニティを含めたインフォメーション」を含めたものに地図が進化すると、おそらく、こんな未来がやってくるのではないでしょうか。
 
1.)いままで口コミでしかゲットできなかった情報の可視化
   例えば「あそこではこんなイベントが行われている」というリアルタイム情報
2.)Airbnbなどで可視化された、一見するとタッチできない機能
   「あそこの家の○○さんは人を家に泊めるのが好きで、おもてなし上手だ」といった情報
 
パラグ・カンナさんは主に「ナショナルパワー」といった文脈として「つながり」について話しましたが、それらは
 
ぼくたちにとっては「コミュニティ」や「スキル」などの可視化ができる未来、として表れてくるのではないかと感じるのです。
 
そしてそんな未来が訪れたときに喜んでもらえる人は、その場所を場所の通りだけではなく、新しい価値を見出せる人ですし、
人の得意を見つけてあげられるような、そんな人だなあと感じます。
 
世界を豊かにする要素を見つけ出し、それをみんなでシェアできる人です。
いまからそんなふうに生きたいなあと感じます。
 
 
今回は以上です。